いきあたりばったり放浪の旅、心得の条。 |
一、車で移動するが、有料道路は利用するべからず。 一、最初の目的地以外、一切のルートを前もって定めるべからず。 一、冒険すべし。一般の旅人が行かない場所にそれはある。 一、高価な宿は利用するべからず。車での野宿を基本とすべし。 一、風呂は、温泉の外湯、共同浴場を積極的に利用すべし。 |
宿を使わないとなると、問題は電気である。取材用のデジタルカメラ、ノートパソコン、
PHS、携帯電話と、泊まった部屋のコンセントで一晩充電という手段がとれない。
電気は車で自給自足しなければならない。
そこで自動車のバッテリーから家庭用のAC100ボルトに変換するインバータを購入する。
これにカーナビが常時ついているワケで、ひょっとするとバッテリーあがりで身動き取れない
可能性もある。一応、バッテリーチェッカをつないでおく。車内から簡単に電圧がチェックできる
やつである。
「子供さんが間違って開けないように、チャイルドロック かけたままにしてたみたいですね」
しっしまった。私としたことが、とんだ勘違いである。やっぱり先を急いで焦ってるのかな。
いやいや、整備員君ご苦労。ちなみに私は結婚しているが子供はいないぞ。
頭をかいて退散。
外湯めぐりと冒険の旅
ってのはどうだろう。 昼間は人のあまり行かなさそうなチャレンジングな場所をめざして、 夕方は外湯につかって疲れを癒して、車の中で寝る。これだな。
ふと見ると、チケット売場の左袖に「青木ケ原自然歩道」なる看板が立っている。
遊歩道かな。まぁ雨の日に森林浴ってのもオツかもしれない。
大きな左向きの矢印に、誘われるように道に入っていく。
正面の進行方向が枝で寸断されている。 写真左下からヒモが斜めに伸びている。 |
写真右下から左上に向かってケモノ道。途中で分岐して一本右斜め上に。 |
行く手を木にさえぎられる。向こう側に行こうとして足元をみた私は、
先ほどから道と平行に紐(ひも)が引いてあるのに気がついた。ロープというより、荷づくり用の簡易な紐にみえる。何のために?
木をどけて、先にすすむ。
紐のそばにカサの骨のようなものも落ちている。そして向こう側に、
道沿いの紐と直角に森の中へ分け入っていく。その先はどうなっているのか分からない。
意を決して...おいおいちょっと待てよ。
戻れなくなったらどうするんだ?
思わず携帯電話をみる。アンテナ一本...かろうじて圏外ではないようだ。時報にもつながる。
紐があるから、方角を見失うことも無いだろう。
意を決して、右に折れていく。
もはや頼りになるのはヒモだけ。地面はぬかるんでおり、いたる所岩肌が顔を出していたり、枯れた小枝が落ちて滑りやすくなっている。
50歩ほど進んで後ろを振り返ると、とても道があるように見えない。白い線がかろうじて、道の存在を示している。
紐に沿って進むと、他から伸びてきた紐と交差しているところを何回かみた。ははあ。
きっとこの紐は樹海のなかに碁盤の目に引かれており、迷い込んだ者の道しるべになるのはもちろん、捜索に入る際に、どのエリアを捜索したかしないかという座標になるのだろう。
一升瓶をまたいで (他に歩けそうな足場は無いのである) さらに進むのは相当に気が引けたが、もう少し行ってみることに。
色々な思いがよぎった。
樹海で亡くなられた方の冥福をお祈りします。
そして、これを読んだ方がおかしな気を起こして足を踏み込みませんように。