PARTECH'93  PARTECH'93は、1993年10月9日〜11日にかけて 千葉市幕張にて開催されました.  9日夜の懇親会に引き続き,10日・11日に各発表が行わ れました.ハードあり,ソフトあり,寺子屋あり,FWDnet ありのバランスのとれた発表会であったように 思います.まずは、10日の発表をご紹介していくことに します.

■寺子屋 for Macintoshの開発

 7L2PTI坂本さんは,パケット通信を使ったネッ トワーク・ニュースシステム,寺子屋のMacへの移植 について発表しました.  UUCP機能に対応していたり,パソコン通信ネット NIFTY-Serveの会議室のログも同様に扱うこと ができるようになっているなど,ネットワーク・ニュー スの統合環境として動作するように配慮されていると感 じました.

■YAGIRI-Systemの概要

 JL1KUF井出さんからは,転送系RBBSネット ワークFWDnetとTCP/IPネットワークAMP Rnetのあいだでニュース,およびメールの相互転送 を行うYAGIRI−Systemについての発表があ りました.  異なるアーキテクチャーのネットワークを接続するイ ンターネットワーキング・システムの,日本のパケット 通信における先駆けともいうべきソフトウエアです.

■TNC-Z

 JE1WAZ米澤さんからは,高速パケット通信を目 的に開発されたTNC−Zについての発表がありました.  開発の動機や設計思想とともに,高速パケットが実用 化されたあとの夢へと話しがひろがっていきました.

■2ポートTNC NP-912

 JN1JDZ菅野さんからは,2ポートTNC NP −912について発表がありました。各種の符号形式や 通信速度の対応などモデム・インターフェースへのこだ わりが印象に残りました.

■64kbpsモデム用フィルターの開発

 JN1JDZ菅野さんからは,もうひとつ発表があり ました.実際にTNCに接続しての実験はこれからとい うことでした。

■Toward New Link-Layer Protocols for Amateur Packet Radio

 ゲストのKA9Qフィル・カーン氏による講演です。 アマチュア無線による,パケット通信リンク層プロトコ ルAX.25が誕生してから,すでに11年(当時)が経 過しました.コンピューター・パワーに代表されるよう に,当時と現在の状況は大きく変化しています.その変 化を踏まえた,新しいリンク層プロトコルについてのア イデアが講演の内容です.  具体的には,FEC(誤り訂正)方式の技術とその実 現手段ということになります.また,無線ならではの問 題である,ヒドゥン・ターミナル(隠れ端末)の対策に ついても触れられていました.  KA9Qインターネット・パッケージは,アマチュア 無線でTCP/IPを実現することだけが目的なのでは なく,むしろこれらリンク層の実験を行うためのツール としての意味が大きいとのことです.ソースコードをす べて公開している理由がそこにあります.新しいアイデ アを実現するにあたって,日本のアマチュア無線家に大 いに期待しているとも語っていました.


 1993年10月9日〜11日にかけて千葉市幕張にて開催され たPARTECH'93の発表のリポート、続いて11日の発表です.

■ニュース閲覧/書き込みソフトの階層化について

 JH6EBR長江さんは,RBBSからダウンロードし たファイルを加工し,ニュースやメールを読みだす環境に ついてを,様々なツールとともに紹介しました.ファイル 操作ソフトATPと,自動アクセスツールATERMを使 い,FWDnetのニュースを読む様子が実際の例ととも に紹介されました.

■Pobox

 JJ1BDX力武さんは,ネットワーク・ニュースとメ ールの相互ゲートウエイ・システムPoboxの発表を行 いました.  規模が大きくなるにしたがって,AMPRnetでは, メールが届きにくくなってしまいました.一方,参加者が 増え転送経路が増えていることもあり,ニュースが届く信 頼性は高くなっています.  そこで,メールが特定のニュース・グループに属するニ ュースに変換され,相手に届いた時点で再びメールに変換 される仕組みが考えだされました.それがPoboxなの です.

■効率的なパケット無線ネットワークの構成法について

 JH4CIN松野さんは,隠れ端末を作らず,効率的に パケットを転送するネットワークの構成方法について発表 しました.HAM Journal No.68 に発表された,「伝送 効率を落とさないパケット通信ネットワークの構成方法」 の延長線上にあるものです.  最適経路条件を求めるための計算が膨大なものになると のことでしたが,最近(当時)になって比較的容易に近似 値を求めるアルゴリズムが電子情報通信学会で発表された そうです.実際に計算を行い実験してみたい,と結ばれて いました.

■アマチュア無線の高速PSK通信にむけて

 JF7WEX鈴木さんによる発表です。現在使用されて いるパケット通信用モデムの多くは,FSKによるもので す.周波数の変化によってデータを転送する方式です.そ れに対しPSKは,位相を変化させることによってデータ を転送する方式です.QPSK(4相PSK)用の復調用 ICが,PCM音楽放送やディジタル・コードレスフォン 用として提供されはじめています.今回の発表では,それ らのICの利用を含めて,実際のシステム構成案が紹介さ れました.

■宮城県,山形県における無線IPネットワーク

 JF7PBW今野さん,JI1FGX上野さんのおふた りの発表です.  クラスター・ルーティングと呼ばれる手法を用いて,計 画的にIPアドレスを指定することによって,実際にIP が通る環境を構築した例について紹介されました.

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構成... 仁礼 英銘