超多忙の気分転換に、年末から「ゲームは 1日2時間まで!」的にちびちびと進めていたスクウェア・エニックスの RPG「Final Fantasy XIII」ですが、1月中旬ぐらいにようやくエンディングまで見ました。
FFXII でリヴァイアサンの召喚シーンのデモを見て以来、リアルタイム日記書きながら解きはじめ、FFXIII, IX, XI とシリーズ飛び飛びにハマり続けて、速解きに命をかけていた時期からは考えられないペースの遅さですが、忘れてしまう前に気になった点を書いておきたいと思います。
一本道が長く、マップがヌルい
もともと Final Fantasy シリーズは、ストーリーもマップも一本道に進む傾向があります。にしても、XIII にいたっては、グラン・パルスというマップ以外はほぼ全て一本道。フォーク状に 3つの道に枝分かれしたと思ったら、うち 2本は行き止まりに拾得できるアイテムが置いてあるだけ。仁礼家のアートチームをもってして「これ、戦闘はおまけ?」と言わしめる始末です。
セーブポイントで、公衆電話をかけるようにショップを呼び出すシステムにも違和感が。店舗が複数並んでいる「町」がなく、町の人との会話を楽しみつつフラグを立て、ショッピングしてまわる楽しみもありません。マップを隅々まで歩き、隠しアイテムを確実に拾えば、装備から強化の材料まで完全自給自足。バイオハザードみたいです。
黎明期のパソコン RPG では、世間は甘くないんだぜ的マゾ要素も合わせてゲームの「味」でした。マップは方眼紙に手書き。コンパスなしで東西南北は記憶が頼り。広大なエリアをさまよって落とし穴に落ち、ヒントのない謎を解かないと先に進めず、ランダムエンカウントで強いモンスターにボコられ、パーティ全滅してセーブデータごと消されて、最初からやり直し。
FF13 ではセーブポイントも多く、次に行くべき場所はマークで明示、の親切さ。最終ダンジョン (?) 以降で中ボス / ラスボス連発にやられても途中からやり直せる仕様は、良く言えば、忙しい現代人に合わせた変化と言えるでしょう。しかし、迷わない、ハマらない、ヒドい目に合わないため、クリアしたときの達成感が半減なのも確かです。
スゴすぎてストーリーが分からない動画
スクエニ得意の、実写に迫るリアルなキャラクターのモーションキャプチャーによるカットシーンは健在です。でも、興味本位でカットシーンだけつまみ食いに見ていた仁礼家の観衆からは、
- 戦闘機に乗っているときに敵の襲撃を受けて墜落するシーン …..
「スゴすぎて、なに起きてるんだかさっぱり分からん」 - エンディングシーン …..
登場人物が何をして、コクーンと住民は結局どうなったの?
といったストーリーラインが分からないという意見が多発しまくりました。
5年という開発期間で、溜まりにたまったデザイナーのリビドーを一気にぶちまけた感があり、グラフィックスの力量は疑う余地もありません。ですが、動きの速い部分だけでなく、見せたいものを絞って情報量を下げ、基本に忠実な絵コンテにするような努力が必要だと思います。
こうなってしまった背景には、人数の多すぎるプロジェクトで意見が出すぎ、見せたいポイントが曖昧になり、座礁しそうになっている危険さを感じます。
キャラクターをカッコ良く見せるため「鉄拳」的スローモーションにも、命をかけすぎています。オートクリップで 1章~13章の説明を書いて補足しまくり、後でコストかけて他言語に大量ローカライズするくらいなら、得意の絵でストーリーを一発説明することに力を注いだ方が良い気がします。
人間の目はそこまで優秀じゃない
FF XIII では巨大な構造物、広がりのある景色が沢山出てきます。ところが近くから遠くまで同一リアリティで精緻に描こうとしており、スーパーリアリズムすぎて、
すまん、俺の肉眼で見た実世界は、そんなにハイデフじゃない
的な違和感を覚えます。PS3 の能力をフルに使いたいモチベやオトナの事情もあるのでしょうが、描画しすぎて大事なカットシーンでコマ落ちしては、やり過ぎでしょう。マシンパワーが足りない時の上手な手抜きの仕方 (e.g. 道をくねらせて奥行きを減らし、オブジェクト数を減らす) を採り入れたり、カメラで言うボケ味を採り入れた方が良いのでは、と思ってしまいます。
主人公の「鬱」が短い
Final Fantasy XII (FFVII) には、主人公クラウド・ストライフが、自分自身に関するショックな出来事を聞かされて、使い物にならない廃人状態になり行方不明、主人公抜きでストーリーが進む時期があります。さらにエアリスという名のヒロインは、前半は元気に戦闘に参加していながら、宿敵に殺されてしまい、二度と復活することはなく、プレイヤーにも大きなショックを与えます。
その辺の印象が強烈すぎて、「FF ってつまり、人間の弱い部分や、暗い部分の描写に持ち味があるんだね」というイメージを持っています。
FFXIII でも、キャラクター 6人の戦う理由や葛藤が描かれ、セリフで性格を描き分けたり、それを演じる声優の演技までいい仕事しています。しかし、肝心の全体のストーリー展開に起伏が薄く、ディズニーランドのパレードのようなポジティブさで、あきらめなければ夢はいつか叶う☆的な予定調和で終わってしまっています。
レーティングを上げてしまうような暴力表現は要らないし、脳天に銃弾一発おみまいするシーンが欲しいといっているのではなく、根底に流れるストーリーに、ドロドロした部分や魚のクサみのような要素がなさ過ぎるのです。
海外市場受けを意識して失ったもの
US など海外市場へのローカライズや、販売本数を意識した初心者受けを考えると、複雑で伏線に富んだお話より、万人受けする派手な演出とシンプルな操作システム、といったものを優先して求められるのはある程度、やむを得ません。
日本人的にニヤリとしてしまうようなジョークは、映像からは排除され、チョコボはリアルすぎて可愛げが無くなりました。技の名前も真面目でカッコいいものだけになりました。お笑いや味といった要素は、ローカライズ可能な声優のセリフや演技に残るのみとなってしまいました。
果たして、そこまでノーマルなゲームを作って、海外のスクエニを愛してきたゲーマーが買うんでしょうかね。
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