Interop Tokyo 2009: 基調講演「インターネットの未来像:ポストインターネット」を聴講した感想。国際展示場からホール8 の方まで、待ち行列がとぐろ巻いた、立ち見が出るほどの大入り基調講演は、果たしてそれだけの価値があったのでしょうか。それともゆるい感じで終わってしまったのでしょうか。
異常な期待の高さの割にゆるかった内容
Interop Tokyo 2009 は名前が Interoperability (インターオペラビリティ) からきていて、インターネット相互接続テクノロジーの祭典です。何の略だっけと言っていましたが、それぐらい下調べしてから来た方が良いと思いますよ、夏野さん。
その Interop の基調講演となると、やはりネットのキーマンが、次世代テクノロジーを語り、今までにない新しい「一言」を期待してやってくる…というのが、平均的 Interop オーディエンス像といったところだと思います。
2ch を作ったひろゆき氏と、iモードの夏野剛氏の対談には、国際展示場入口だけでは列が収まりきらず、ホール8 の方まで長蛇の列ができました。
正直、その期待に応える内容だったかというと No です。
「テレビの、これから」の一部焼き直しも
私が出演した「テレビの、これから」で放送されたのと同種の、年代別、メディア別の視聴者数といった統計データを挙げての一部焼き直しです。同番組で、生放送を茶の間で見せることにこだわるテレビ業界、の話は、私があきれて生放送中に反論した内容の延長でしかありません。
ネットテクノロジー的には最近旬の Twitter が出てきたぐらい。
ニコニコ動画と、「ユーザー生放送」の宣伝をさかんにしていましたが、13年前に自分ちの結婚式をネットで世界同時中継してマスコミの耳目を集めた本人としては、眠い内容でした。 🙂
誰でも言えそうで、ひろゆき氏にしか言えない一言
ただ、ネットで起きていることのトレンドに対する、ひろゆき氏がほんの一言ずつぽつぽつ言っている言葉の端々から、時代を捉えるセンスというか、ヒントを感じました。
- テレビは面白いものを作っているが、会社員の帰宅時間を考えるとリアルタイムでは見せられない。
- 海外でも受ける形にすればきちんと流行る。
そして何より、ネットに比較的めざとい観客のネガキャン的心情をうまく代弁した一言
- IPv6 は来ない。
そうなんですよね。IPv4 はもうすぐ枯渇する、というアオリ文句をビジネスにしている Interop 出展各社をさぞや怒らせた一言だと思いますが、IPv6 の足音が聞こえてきて、Windows も含めて対応はしているものの、実際に取って代わるのかというと、限定的に使われているだけでしかなかったりします。
未開の荒野から土管に成り下がったインターネット
かつて 90年代は、ネットというと一種のフロンティア精神であふれていました。
最近会社ごと Oracle に買われたワークステーション「Sun Sparc」上で動いている Web サーバの ハイパーリンクを始めてクリックしてみたときの衝撃は忘れられません。IP アドレス、サブネットマスクってどうやって計算するんだという話から始まり、UUCP によるバケツリレーから常時 IP 接続への変化、DNS による整然としたドメイン空間のツリー状管理。あらゆるテクノロジーが新鮮に見えた時期がありました。
今では ISP にビジネスとしてのうまみがなくなり、検索エンジンは 3社による寡占状態になり、携帯電話市場が飽和期を迎え、すでにあるものを組み合わせただけの、なんちゃって Web サービスが幅を利かせ、クラウド、などという内容自身がすでにクラウドな概念をキーワードにするしかなくなり、ユビキタスの株が暴落し (さいごのは冗談)、インターネットは誰もが使っている土管、インフラに成り下がりました。
逆に言うと、ひろゆき氏を持ってしても、次はコレというはっきりとした方向性が出てこないこと自体が、ネットのそうした閉塞感を表しているのかもしれませんし、もしかすると次の何かを虎視眈々とプランしているのかもしれませんね。
コメントを残す
コメントを投稿するにはログインしてください。