アメリカ、ロサンゼルスで行われたコンピュータゲーム関連の展示会 E3 ((Electronic Entertainment Expo)) で、ソニーが小型ゲーム機 PSP ((プレイステーション・ポータブル)) の新型、PSP go を発表しました。11月1日発売だそうです。PSP go では光ディスク UMD を廃止しました。残念ながらソニーは一つの間違いをおかしたような気がします。それは廃止したことそのものではなく…。
UMD 廃止は「大容量メディア」を切って捨てたのではない
PSP といえば、もともとトースターのように、本体上面からディスクメディア UMD を挿入してゲームをプレイしていました。ゲームソフトの供給も、映画作品の供給もすべて UMD メディアです。今回の PSP go では、その UMD デバイスを無くして、代わりにフラッシュメモリ搭載にしました。
「ディスクメディアを廃止した」というと、イメージ的に大容量メディアを無くして、雀の涙みたいな小さな容量しかないメモリを内蔵した廉価版が、go なの? とも思えます。
が、実際には UMD のメディアに記録できる最大容量は 1.8GB しかありません。それに対して PSP go 内蔵のフラッシュメモリは実に 16GB で、実に 8倍強の容量アップになります。
(2009/8/12 追記 – DVD, Blu-ray はそれぞれ片面の場合)
2004年に PSP-1000 を購入した当時、プレイステーション・ポータブル バリューパックに付属してきた外付メモリースティック Duo の容量はわずか 32MB でした。当時の水準からすると、UMD というのは十分大容量デバイスでした。それが今では、フラッシュメモリの低価格化に追い越されてしまったわけです。
メモリか円盤メディアの選択は、価格と容量のトレードオフで決まる「いたちごっこ」のようなものです。現状ソニーとしては、バッテリーは食うしスペースは取るし、可動部分があるため故障率が高めの UMD は、メモリより容量が小さくなった今、口実をつけてさっさと切って捨てたいはずです。
UMD がある PSP と、ない PSP の共存が死を招く
PSP 用ゲームソフトの容量は、UMD 2枚組というモンスタータイトルも無くはありませんが、UMD 1枚の 1.8GB を超えないことをまず作るでしょう。実際には 1GB を切っているものも多いようです。
対して、ユーザーのブロードバンド環境は、光ファイバは伸び悩んでいるとはいえ、ADSL を使っても 1GB のゲームソフトをダウンロードするのは、無理な相談ではなくなってきました。
またディスクの交換なしに内蔵メモリに複数本入る利便性は、自宅の PlayStation 3 がいつの間にやら評価版ゲームやら、洋画のトレイラーやらでいっぱいになっていることからも明らかです 🙂
ゲームソフトが、店頭でのパッケージ販売からネットでのダウンロード販売に移行していくのは、流れとしてはある程度避けられないでしょう。
それより問題なのは買い控え現象。ソニーは UMD を搭載した従来シリーズも、PSP go と並行して販売していく、としています。しかし同じアーキテクチャで、ソフトウェア供給デバイスの異なる 2ラインが同時に存在すること自体、命取りのような気がします。
- 従来機種を買ったら、いつ UMD が廃止されるか分からない。
- PSP go を買ったら、いつになったらダウンロード販売が主流になるか分からない。
こうなると、HD-DVD と Blu-ray と、どちらが主流になるか分からないのと同じで、どうしても買い控えのデッドロックがが発生します。ソニーは VHS vs. β 規格から始まってことあるごとに、他社と記録メディア戦争に突入するのが大好きですが、ソニー自ら、わざわざ似非メディアウォーズを作り出してしまったとも言えるでしょう。
ソニーは次のどちらかの手段を取るべきだったと思います。
- UMD のライフサイクルを区切ってしまって、何年までに UMD 廃止、と明言してしまう。したからといって、Windows XP のようにすぐ廃止できるわけではありませんが。
- UMD を廃止したいなら、次世代アーキテクチャの PSP (いわゆる PSP2) を出すタイミングで一挙に変える
さてさて、ネットの反応見て、9月24日からの東京ゲームショウで何を追加発表するのか、ソニーの出方が見物ですね。
次回は PSP go の形状についてです。
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