Eee PC 901-X にやろうと思えば Office 2007 をインストールできなくはないのですが、気が進まない理由はなぜでしょうか。

一般的に PC に内蔵されている HDD は、価格の割に大容量な反面、構造上衝撃に弱いという弱点を持っています。重症の場合、スピンドルモーターやヘッドのトラブルで、ある日突然、HDD 一個すべてが読めなくなりご臨終することもあります。また軽度の損傷として、不良セクタといって、部分的にある領域だけが読めなくなることがありますが、代替セクタが残っていれば代わりに割り当てられ、使い続けることができます。

SSD も PC に内蔵して HDD と同様に使われますが、稼動部品がないので、衝撃に対しては HDD より頑丈です。モーターがある日壊れることもありません。だったら、メモリなんだし半永久的に使い続けることができるのでは? という気もしますね。

ところがです。NAND 型フラッシュメモリを利用した SSD では、寿命が短い、すぐ壊れるぞと言われ続けています。衝撃ではなく、書込み回数が一定回数を超えると正常に読めなくなってしまうのです。デジカメのフラッシュメモリや、外付 USB メモリなども、SSD として売られているものと多少特性の違いはあるようですが、やはり同一メモリセルを書き換える / 消去できる回数に制限があって、それを超えるとそのセルは遅かれ早かれ壊れます

たとえば、Program Files 以下のアプリケーションなど、一度インストールしてしまったら内容がほとんど変わらないような使い方では、読み出しメインになるのであまり寿命を気にする必要はありません。しかしログファイルや、IE のインターネット一時ファイルのように、短いサイクルで何回も書いたり消したりするような操作では、書き換え可能回数を一気に使い果たしてしまいます。

寿命自体はどうしようもないのですが、少しでも長持ちさせる技術として、「このファイルを書き込みたい」と OS から指示されたときに、メモリコントローラ側で工夫をします。毎回異なるセルを使用し、わざと散らばって書き込みを行うことで、セル 1個あたりの摩耗を分散させ、全体として少しでも寿命を延ばすのです。この技術をウェアレベリング (wear leveling) と言います。

ウェアレベリングの具体的な方法はメモリメーカー各社の特許になっていますが、普通に考えると、書き込むセルの候補地選びには、今ファイルが何も書かれていない空き容量がたくさんあった方が摩耗を分散できそうだ、と思われます。

ここでやっと話がつながってくるわけですが、SSD の寿命を延ばすためには、Office 2007 が入るからといってやたらと詰め込まないのが良いのではないか、というわけです。

もっとも、ウェアレベリングは実際には、出荷時に OS がすでに書き込まれているような Cold Block と呼ばれる部分も積極的に活用する戦略もあるようです。「書き換えなさい」と言われなくても、Cold Block からある程度摩耗したブロックにデータを退避し、まだたっぷり書き換え可能な「元」 Cold Block を新たな書き込み用エリアに使うと。

セル 1個の書き換え可能回数も 1万回だの数万回だの言われており、さらにこうしたウェアレベリングのアルゴリズム上の工夫もあるので、一概に Eee PC の SSD がじゃあ何年で壊れるのか、を正確に予想することはできなさそうです。

おっと…うっかり心配性モードに突入してしまいましたが、1年で飽きて買い換える予定なのでしたね。 🙂