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延期になったダビング10 (ダビングテン) ですが、そもそもなぜ仕様として微妙なダビング10 が検討されることになったのでしょうか。

ITmedia の記事「ダビング10」はコピーワンスの緩和かをもとに、議事録の該当部分を拾い読みすると、

EPN が事実上のコピーフリーであるという話題になり、権利者代表である堀義貴さん (ホリプロ代表取締役社長、日本音楽事業者協会常任理事) から、

どうして善良な一市民が、そんなに無制限にコピーすることにこだわるのかということの正統な理由を僕らが納得できるようにお答えいただいてない。一体何万枚コピーする気なんだと。

それに対して、消費者代表である高橋伸子さん (生活経済ジャーナリスト) から

無制限にコピーさせてくれということは消費者は一切今まで主張したことはありません。私どもは、権利の範囲内でそれが何枚か、3枚か、5枚か、そこのところも探りながら、普通の人がその制限を感じないようなもコピーをさせてくれという主張しかしていないと思いますので、誤解はぜひ解いていただきたいと思います。

このやり取りが、ITmedia の記事によるとダビング10 へ議論を方向づけたきっかけになっていると言います。

立場の異なるエリアから人が出てきているので、ある程度仕方ないのかも知れませんが、議論が少しずつズレていくのが目に見えるようで、暗澹たる気持ちになりますね。問いかけをしたのは、以前もこのエントリで書いた方で、

goo 実態調査: コンテンツ産業、「ネットのせい」にしてエンターテイメントを忘れる

コンテンツを出費して買うユーザーをどう捉えているのか一度聞いてみたい方ではあります。

で、無制限にコピーしたいのかと聞かれて、n 枚のコピーで良いと答え、それがそのままスペックになる流れもどうなんだという気がしますね。

前回のエントリで書いたように、もともとはコピーワンスの仕様がムーブ失敗を考慮していないわけですから、ARIB 仕様を改善して堅牢なコピーワンス改、にすれば、権利者が危惧する実質コピーフリーな事態も抑制でき、使い勝手も向上するはずです。

EPN も、ローカルでの機器同士のコピーのリスクを過大視しすぎな気がしています。ハードウェア、ソフトウェア側でのコピープロテクションは結局はいつか破られてしまうイタチごっこの歴史が繰り返されてきているわけで、オークションへの違法コピーの出品を危惧するなら、その出品の監視を強化していく方向が適切なのではと思います。

仕様を決めるにあたってユーザーのニーズを把握することは重要ですが、あるユーザーのフィードバックどおりに仕様に反映することが、その人を満足させる結果になるとは限りません。

なんだか感覚的な話になってしまいますが、膨大なお客様の声を受け取って持ち帰り、技術屋がもっと全体的な、コストと、現状の仕様と、各種のリスクを並べてみて脳に汗をかき、これらをすべて満足するのはムリだとうなったあげく、すべての要素が電撃のようにつながって「いいスペック」が出てくる瞬間があるものです。

それはやはり、最後に残った少人数が冷静に自分たちの頭で深く考えているときにやってくる奇跡の瞬間であり、売り言葉に買い言葉のミーティングの席上では決してないと思います。

続き: ダビング10: 赤信号、車は急に止まれない – ブルーレイ課金からダビング10容認、置き去りにされる補償金制度