前記事: LASIK: 術後編: 老眼鏡は「近視の戻り」を防ぐのに効果的か?
老眼鏡 (遠視用メガネ) を使う条件については分かりました。本当に有効なのか実践してみて、眼鏡屋さんの意見も聞いてみました。
PC ディスプレイの字を読むにはかなり厳しい
会社や自宅の PC ディスプレイは、スペースやディスプレイの値段と、必要なピクセル数との兼ね合いで、解像度の割にインチ数が小さいものが多いのです。おそらく眼科で想定しているよりも字は小さく見えるはずです。
実際にディスプレイから顔まで 70cm 以上、をきちんと測って作業していますが、一字一字はまずピンボケします。クリアには見えません。見慣れた単語の羅列や、重要度の低い文章であれば、前後のつながりから推測して、これでもある程度読めます。が、見慣れない単語、重要な数字などは、この距離で 100% 正しく判別しろというのは不可能です。
長くなるのでまた別途書きますが、あの手この手で Windows Vista や Internet Explorer の設定で大きく表示したり、いろいろ工夫すれば、見やすくはなります。しかし、仕事では「OS デフォルトの設定でどんな風に文字が表示されるのか」を確認する必要があり、そのような時はデフォルトに戻さざるを得なくなります。
また手術後しばらくは眼精疲労がつきものですが、老眼鏡をかけているから余計に眼精疲労を増やしているのかどうか、は判断がつきませんでした。手術直後は遠視傾向ですので、確かに近くを見ると目が過大な努力をしているのがよく分かり、見過ぎると気持ち悪くなることもあります。
老眼鏡ごしではそのようなインパクトは感じない代わりに、はっきりとは見えない字を「なんと書いてあるのだろう」と判別しようとする努力が必要になり、そこで眼鏡ナシでは不要な緊張が目に逆効果を与えるのではないか、という心配があります。
それでも、老眼鏡はかけなければならないのか
上記のようなジレンマを、検診のときに執刀医の方に相談してみましたが、返ってきた答えはやはり、
「判別の難しい字だけは一時的に近寄ってもいいから、基本的には 70cm をキープしてください。錦糸眼科ではそのように指導しています。」
というきっぱりとしたものでした。
そりゃ老眼鏡で近視予防、というのは軸性近視の原理から理解できなくもないのですが、これだと PC で仕事しながら見えるか見えないか分からないランドルト環を見て、視力回復訓練しているようなものなので、やや荒行、という気もします。
老眼鏡をメガネ屋さんに見せてみた
最寄りの眼鏡屋さんに行って、処方された +1.5D の老眼鏡を見せてみました。店頭の機械に乗せてみて、
「ん…これ +1.75D ですね」
「え?」
確かに開封したときは +1.5D のラベルが貼ってあったのですが、どういうことでしょう。眼鏡屋さん、おもむろに奥に引っ込んで数分。
「うーん…手動で確認すると +1.5D か +1.75D … で微妙なところですが、どちらかといえば +1.5D でしょうかね」
どっちなんでしょう。教えてもらいました。
メガネ屋「レンズメーターで、こうやって乗せるだけで数値が計測できるタイプでは、ノングレアコートのメガネは、光の反射により正しく計測できないことがあるんです。」
- レンズ、フレーム込みで大量生産された老眼鏡は、レンズの度数に多少誤差があっても、+1.5D として出荷することがある。
- 処方されたメガネは、ノングレアコート (反射、写り込み防止) がされてないタイプである。つまり高級なメガネではない。
- 誤差がある上に、ノングレアコートがないと、機械の方でもやや誤判定している可能性はある。
- そのため、コロナターゲット式の古いレンズメーターで再確認してみたが、+1.5D か +1.75D か微妙なところ。
要するにメガネ、機械どっちにも誤差はあるけれど、このメガネ、+1.5D よりはちょっと度が強いと。
ということは、同じように 70cm の距離でものを見ても、正確な +1.5D に比べると、よりピンぼけして見えてしかるべき、ということになります。
Nire: 「ちょうど +1.5D だとして、このメガネで 70cm の距離のディスプレイを見るのは妥当なんですか?」
メガネ屋: 「正視 (+0.0D) ならば、焦点距離から考えて 70cm は適切です。確かに目の方では焦点を近くに合わせなくて良いので、ある程度、近視の予防には役に立つでしょう。でも、+1.5D かあ…ちょっと度数がキツいんじゃないでしょうかね」
再び錦糸眼科の先生に教えていただきました。
Nire: 「+1.5D より度の弱いメガネじゃダメなんですか?」
先生: 「+1.5D より弱いと、遠視鏡として度数が弱すぎて、近視の戻りを予防する効果はあまり期待できないですね。ウチでは、+1.5D 以上を処方しています」
老眼鏡のまとめ
「近視の戻り」を防ぐためには、どんなに見えづらくても、老眼鏡 +1.5D をかけて 70cm が絶対防衛ラインのようです。
しかし品川近視クリニックの場合は、老眼鏡についての指導がされていないため、品川で受けたレーシッカーズからは「目疲れるのなら外したら?」という反対意見もあります。また現実問題として、術後 1年以上老眼鏡なしで 1.2 をキープされている方もいます。
「近視の戻り」には近視の進みやすい年齢とそうでない年齢の違い、などがあって、私の場合は無くても本当は平気なのかもしれませんが、原理的には理解できる、錦糸眼科だけでなく眼鏡屋の意見としても、ちょっとやり過ぎでは思いながら賛成、ということで、総合的に考えると老眼鏡を半年はかけ続けてみようか、というのが個人的な判断です。
一方で、現在の PC ディスプレイ上での字の表示サイズを考慮した、よりよい老眼鏡の度数設定や、かけ方のガイドラインがあると良いと思いました。
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