普段は穏やかにしか見えない多摩川が、水位が上がり氾濫しそうになった翌日、どうなったか心配で見に行きました。

Nirecom は多摩川沿いとは言わないまでも、散歩に行こうと思えば行ける距離に住んでいます。付近に二ヶ領上河原堰という堰堤があって、気候が穏やかなときは釣りを楽しむ人が大勢いる場所です。

10月12日、本州に台風19号が上陸した時、多摩川の監視カメラを見ていたら、川沿いで普段は見えている木が 1本を残して水に沈んでいました。

台風19号: 多摩川: 監視カメラの映像

近所に警戒レベル3の避難警報が出て、このエリアの知人は避難しました。自宅そのものは対象エリアではありませんでしたが、割と間近に警報エリアが広がってきて、仁礼家も 1日気が気ではありませんでした。

水のきれいな二ヶ領上河原堰が変わり果てた状態に

翌朝、多摩川流域の様子を見に行ってみることにしました。

品川通りの南側から多摩川にかけて下り坂が始まっており、だんだんと標高が低くなるのですが、幸い住宅地には被害は見られないようです。ただ田畑が、雨で一部冠水しているようでした。

台風19号: 多摩川: 田畑

調布市民プール付近の堀。水位は落ち着いているようです。

台風19号: 多摩川: 堀

多摩川の土手に面している住宅も、冠水していたりはしないようです。

台風19号: 多摩川: 二ヶ領上河原堰: 付近の住宅

じゃあこの辺の流域は無傷なのかな…? と思いきや、土手の内側、二ヶ領上河原堰はまったく違う景色になっていました。

平常時はこういう状態。画像をクリックすると、当時作った動画にリンクします。

多摩川: 二ヶ領上河原堰: 遠景: 台風19号前

これが台風後の様子。

台風19号: 多摩川: 二ヶ領上河原堰: 遠景

横から見るとこうです。水量が多く、堰の前後でまったく段差がなくなっています。水も濁っていて、台風前は底がある程度は見える透明度だったのが、濁流でまったく見えなくなっています。

台風19号: 多摩川: 二ヶ領上河原堰: 横からみたところ

アユが遡上できる (遡れる) ように階段状になっている魚道が、濁流にすっかり埋まっています。

台風19号: 多摩川: 二ヶ領上河原堰: 濁流

その魚道に誤って落ちないようフェンスが伸びているのですが、平常時はこう。

台風19号: 多摩川: 埋まったフェンス: 台風19号前

それが途中からすっかり土砂に埋まってしまっています。

台風19号: 多摩川: 埋まったフェンス

もともと平坦な場所ではありませんが、周辺も砂礫が流されてきてさらにボコボコ。

台風19号: 多摩川: 砂礫

木がほとんどなぎ倒されている

監視カメラに写っていた、1本を残して水に沈んでしまった樹木はどうなったのでしょうか。

平常時の様子。

台風19号: 多摩川: 監視カメラの映像: 平常時

現地に行ってみると、一本を残してきれいに折られてしまっています。足元の草がすべて川下方向に倒れていて、昨夜はここが水と土砂に沈んで押し流されたことを物語っています。

台風19号: 多摩川: 監視カメラに写っていた樹木

土手よりの樹木でさえ、ものの見事に折れ曲がってしまっています。

台風19号: 多摩川: 曲がった樹木

放置自転車も、樹木が絡みついた状態でなぎ倒されていました。

台風19号: 多摩川: 埋まった自転車

流されたのか、亀が一匹。ちなみに、そばにいた方が拾い上げて、川に返していました。

台風19号: 多摩川: 亀

多摩川の治水は良くなったのか

洪水といえば、タイのチャオプラヤ河流域が大洪水になったことが記憶に残っています。趣味がカメラなので、Nikon や Sony などのカメラメーカーの生産拠点が打撃を受け、出荷が著しく遅れたことがあります。

日本での洪水はというと、不謹慎ではありますがあまり身近な危険という認識がなかったのですが、信じられないことに、その身近な多摩川が決壊して狛江の住宅を押し流したことがあります。1974年のことです。

その時、原因の一つになったのが旧二ヶ領上河原堰でした。古い堰は一度川の流れを元に戻すために爆破され、引上式のゲートと可動堰を備える作りに作り直されたのが現在の新・二ヶ領上河原堰のようですね。

横から見た堰がずいぶん平らに見えるのも、底が可動した結果かもしれません。

台風19号: 多摩川: 二ヶ領上河原堰: 横からみたところ

水位は監視カメラの写真で見る限り、かなり際どいところまで行きましたが、どうにか持ってくれて堰が有効に機能したのではないかと思います。

今回、川の中と外の様子がここまで明確にちがうことに驚いています。二ヶ領上河原堰の上下流に、土砂と増えた水が荒れ狂っている中、外側の住宅地は翌日から普通に道路に車が走り、人が生活を営んでいて、物流が抑えられているにしても、かなりのお店が普通に再開している。

逆に、広範囲で冠水してしまった二子玉川地域では、景観が悪くなるからと新堤防に反対したことがあるらしく、以前のブラタモリで紹介されていたようです。

大規模な治水対策でいうと、よく特撮などで使われる首都圏外郭放水路などの地下放水路が建設されたのは知っていて、今回の台風19号でも、人知れず地上の水量を抑えるのに大幅に貢献しているはずです。

首都圏の治水は、回を重ねるごとに対策されて効果が出ているということですが、自然の力を甘く見てはいけないし、地球温暖化の影響で威力が増大していく台風に対する備えが必要だということですね。

台風19号の被害に遭われた方の無事をお祈りし、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。