平成21年5月21日から開始される裁判員制度に備えて、裁判員候補者通知の送付が約 29万5千人に対して始まりました。朝日新聞の記事によると、コールセンターに初日だけで約 870件の電話があったようです。
410件が除外を望んでいる初日のコール
870件のうち、約半数が辞退に関する質問で、40件が「やりたくない」「名簿から名前を消してほしい」といった苦情だったようです。
辞退が認められる基準全般 | 180 |
高齢者や学生などの辞退 | 90 |
病気やけがによる辞退 | 70 |
育児や介護による辞退 | 30 |
苦情 | 40 |
コールセンターの電話番号は公表していないそうなので、純粋に 29万5千人の誰かが電話をかけたとして、初日だけで 0.1% の人が何らかの理由により裁判員から除外してもらえないかという意志表示をしたことになります。郵便が候補者に届くのは 29日、12月1日、そして 12月上旬にかけてだそうですから、初日 11月29日と、次に郵便が届く週明け 12月1日をピークとして、1ヶ月ぐらいかけて右肩下がりのインバウンドコール数になっていくでしょう。
33.6% が「参加したくない」とした特別世論調査
そういえば、世論調査で裁判員をやりたいか、やりたくないか尋ねたものがあったなと探してみると、ありました。平成18年12月に行われた「裁判員制度に関する特別世論調査 (PDF)」で、全国 20歳以上の 1,795人のうち、
参加したい | 5.6% |
参加してもよい | 15.2% |
あまり参加したくないが、義務であるなら参加せざるをえない | 44.5% |
義務であっても参加したくない | 33.6% |
明確に「参加したくない」とした人は 33.6% にものぼることが分かります。母集団が 29万5千人になっても、3割程度の人が明確に参加したくないという意思表示を行うとすると、初日の 0.1% というのは今後増えていくにしてもパーセンテージのケタが 2ケタぐらい少ない気がします。1ヶ月後は様子を見ないとなんとも言えないでしょうが、立場的に参加したくないとした人と、実際に辞退しようとアクションを起こした人の数にかなり開きがあるのは、不自然な気がします。
心理的不安が払拭できていないわりに、辞退希望者が少ない気がする
この世論調査では、参加したくない理由として、「自分達の判決で被告人の運命が決まるため責任を重く感じる (64.5%)」「冷静に判断できるか自信がない (44.5%)」という心理的不安がトップ 2を占めています。
最高裁判所のサイトには裁判員制度 Q&A があって、確かに聞きたくなるポイントが列挙されつつあるようですが、大半の人にとって、裁判員制度と言われて印象に残っているのは例の「ええっオレが?!」の CM のような、裁判員制度が始まってあなたも候補者名簿に載って郵便物が来るかもしれません…といったメッセージどまりな気がします。
ネットではネガティブ面が強調されるのはいつものことながら、裁判員になったら被告人に顔を覚えられて復讐されるんじゃないかとか、O・J・シンプソン裁判のように裁判員 ((シンプソン裁判では陪審員)) が 265日も缶詰になるんじゃないかとか、といった不安要素を助長するコメントがあふれています。これだけ不安感でモヤモヤしている中で電話してきたのがたったの 0.1% というのは、原則的に辞退できません、と言われるとそういうものかと受け入れてしまう国民性の結果なのでしょうかね。
私は、個人的には法曹を志した時期もあるので、仕事の状況にもよりますが、裁判員制度に選ばれるものなら望むところ、経験してみたいものです。
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