調布飛行場にある川崎航空という会社にお邪魔して、思いがけず、航空写真を撮影する特注セスナと、カメラ機材を見せてもらえることに。コンビニの監視カメラみたいなのがセスナの腹についていると思った人? 私もそう思いましたが、全然スケールが違いました。
機内に鎮座しているカメラが、「穴」から下界を狙う
N: 「航空写真って、やっぱり胴体の下にカメラついてるんですか?」
川: 「本体は機体の中にあって、胴体の下に穴空けてあるんですよ。見る?」
見る見る。そりゃ見ますとも工場見学。見た目は普通のセスナ機ですが、
開いている後部ドアから中をのぞくと、4人乗りのはずのセスナの後部座席が無く、いかつい「ネイビーカラー」の物体が 2つ。
左のデカいのが潜望鏡タイプの光学ファインダーで、右のフチコマラジコン戦車みたいなのがカメラです。R2D2 と C2PO の比較みたいな感じでもあります。
N: 「レンズは交換とかできます? 」
川: 「できますよ。こっちに交換レンズが…」
と、別室で釜みたいな丸いケースを無造作に空けて見せてくれました。
N: 「うおお。ここで開けちゃっていいんですか。ホコリとか付着したらタイヘンなことに…」
川: 「大丈夫。多少のホコリは問題ないよ」
N: 「デジタル一眼みたいに焦点距離 何mm みたいな表現するんですか?」
川: 「いや、サイズで表しているかな」
ファインダーとカメラのために、セスナの床というかドテっ腹に穴が空いていて、「なんじゃこりゃあ!」状態になっています。ネタが古くてすまん。
左のファインダー穴は、飛行中にニョキニョキと潜望鏡を逆さにしたような感じで筒が下に伸びて、「いま機体の真下がどんな景色なのか」を正確に知ることができます。着陸するときは、しまうのを忘れずに。
右がカメラのレンズが顔出していますが、これだけデカい望遠レンズがあれば….じゅるり。
巨大なレンズは男のロマンですよ。
GPS でシャッターも歪み補正も自動
航空写真は、国土地理院などの地図データにも応用されることが多いため、リクエストされたコースを可能な限りまっすぐに飛び、求められたエリアの写真を正確に、規則正しく、一定間隔で撮影していく必要があります。正確に撮った写真をタテヨコにつなぎ合わせていくと、おなじみの「航空写真」になるわけです。
N: 「シャッターは、パイロットが自分で切る余裕ないですよね。もう 1人乗って操作するんですか?」
川: 「乗るけど、基本的にはシャッターはカメラが自動で切ってくれるよ」
右側のカメラは、頭に黒い箱が載っていますが、これがセスナの頭上部分に取り付けられた GPS アンテナからの信号を受信し、自動的に測位し、一定時間ごとに勝手にシャッターを切ってくれるそうです。
川: 「あと機体が傾いたら、傾きを記録しておくようになってるね」
N: 「どうしてですか?」
川: 「傾いていると、撮影した写真が歪んじゃうでしょ。それを補正するため」
デジタルカメラフリークな人は、こう思うかもしれません。
「デジタル一眼がレンズの歪みを撮った時点で補正してくれるみたいに、撮ったその場で、画像データ補正してくれないの?」
実はデジタルカメラじゃないんです
いやいや。実はこれフィルムカメラなんです。撮影したフィルムも見せてもらいました。カメラ自身のサイズがサイズだけに、現像したフィルムも 35mm の細長いやつじゃなくて、レントゲンの写真みたいに巨大です。
高度 3,000m から撮るため、それほど広角レンズというわけでなくても、写真 1ショットでずいぶん広範囲の河川や森、建物が写っているのが見えました。
航空写真用のデジタルカメラも広く使われているそうですが、デジタルは定期的にメンテナンス費用がかかるのと、レンズのラインナップではまだフィルムカメラの方が上だとか。
フィルムは最終的に、フィルムスキャナにかけて画像データにするそうです。
しかし、何というスグレモノ。コンシューマー用のコンパクトデジカメや、デジタル一眼カメラにも GPS ユニット搭載のものが増えてきていますが、業務用のカメラはすでに GPS 連動の撮影システムや、傾き補正システムまで当たり前のようです。それでフィルムカメラというのが、また味があって良いじゃないですか。
お仕事見学シリーズ、まだあります。
つづく。
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