無線 LAN の暗号化方式が解読されつつあるのなら、新しい暗号化テクノロジーをそれを上回るスピードで開発し標準化すれば良い – と思いますが、そうもいかないようです。
無線 LAN テクノロジーの標準化はスピードダウンしている
ネットワーク技術は、メーカーの異なる製品をお互いにつなぐ必要上、新しい技術を開発するだけではダメで、各社の合意のもとに標準や規格を策定していく必要があります。
たとえば高速無線 LAN の規格で IEEE 802.11n というものがあります。2006年に最初のドラフト (たたき台、草案) が承認され、今もなお最終版を出すことができずにいて、2009年に持ち越されるだろうと言われています。
もっとも、それではいつまでたっても IEEE 802.11n 対応の高速無線 LAN 製品を出すことができないので、Wi-Fi Alliance という業界団体はドラフトの段階で、無線 LAN 機器の認証つまりお墨付きを出しています。いわば見切り発車です。以下の発表記事に DRAFT certified のロゴがあります。
たたき台を標準にする、というのも無理がある話で、DRAFT ロゴがついている 802.11n 対応の製品を購入しても、802.11n が最終版になった後、
- ドラフト 2.0 と最終版との互換性がどの程度保たれるか分からない
- 無線 LAN アクセスポイントがファームウェアの更新により対応する保証はどこにもない
というリスクがあり、砂上の楼閣に過ぎません。
こうした標準策定のスピードダウンの背景には、無線 LAN の普及による参入メーカーの増加があります。PC だけでなく、今やオーディオ、ビデオなどの家電、ゲーム機器などに広く用いられるようになったいま、より多くの関連メーカーの利害が対立し、なかなか議論が収束しないわけです。
元はといえば、暗号化テクノロジーの WPA も IEEE 802.11i のサブセットとして Wi-Fi Alliance が策定したものです。ネットワーク技術はこうした見切り発車の歴史でどうにか前進してきたわけですが、インターネットによる集合知も人数が増えすぎて、効率が逆に下がってきているように感じられます。
最後に頼れるのは有線 LAN
WPA2-AES までしかない状態で、そこまで解読されるようなことがあったら…などと地球最後の日的なことを考えてしまいますが、1エンドユーザーの立場としては深く考えなくていいかもしれません。無線 LAN を使わなければいいだけです。:-)
仁礼家の自宅ネットワークでは、無線の使用を著しく制限してきました。ノート PC も Eee PC 901-X があるにはありますが、外出時など仕方がないときだけしか使いません。当然ながら WPA2 です。
それ以外のメインで使用するデスクトップ PC やサーバー群は、言うまでもなく LAN ケーブルによる有線 LAN です。
よく部屋の隅にケーブル引き回したくないとか、壁に穴あけたくないとか、美観上の理由だけで無線 LAN にしようとした結果、部屋や階をまたいでの通信が思うようにいかなかったり、設定は WEP のまま、電子レンジが動き出すとネットにアクセスできなくなる、という話まで聞きます。また、きちんと WPA2 にしてもやはり事前共有キーという一種のパスワードが増えるわけで、それを推測不可能なものにして管理し、解読のニュースにおびえるのは正直コストに見合わないと感じます。
適材適所、本当にやむを得ない箇所にのみ無線 LAN を用い、あとは有線 LAN で固めるのが、安い、(通信速度が) 速い、快適なネットワーク環境を手に入れる道です。 🙂
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