デジタルビデオカメラが、編集が重いという課題を残しながらも HD 画質のものは AVCHD が多数を占めつつあることを書きました。ところが、某所のヨドバシカメラで話していたら HDV を勧められました。
HDV は、前回も少し書いたように、DV の HD 画質用のものです。HD 画質なのに、MiniDV テープで良いんですよね、と店員。
Nire: 「AVCHD 規格のカメラが増えてきてどれも HDD / メモリ記録タイプだから、家庭用のデジタルビデオ市場でテープデバイスは死んだ、とおもってましたよ」
店員: 「そういう風に思っていらっしゃるお客様は多いですね。でも実際には HDV の方が、AVCHD に比べて圧縮をあまりしないので、編集もしやすいし画質の劣化も少ない」
HDV は動画編集に有利なのか
HDV の基になった DV は、映像編集がしやすいと言われています。
MPEG はフレーム内圧縮だけでなく、フレーム間圧縮というものを行います。I フレームと呼ばれる基本フレームを全画面に描いた後、2コマ目以降しばらくの間は、動きのあった小さな範囲のデータだけ差分上書きしていきます。この方法は頭からデータを録再するだけならまだ良いのですが、ランダムに途中のコマを切り出したり、真ん中を切って尺を詰めたり、といったことをしようと思うと、編集処理が複雑になります。
これに対して DV ではフレーム間圧縮が最初からなく、ベタでフレームごとの絵を 1枚目から順に描いていくだけなので、5コマ目から 10コマ目だけ削除ね、と言われても対応しやすいのです。
しかし、HDV は DV 同様に動画編集がしやすいのかというと、(店頭ではそうなんだろうなと思って聞いていたのですが) そうとは限らない気がします。というのも、テープと言えど、HD 画質で膨大になってしまったデータ量を縮めるため、フレーム間圧縮を行う MPEG-2 ビデオによって動画を記録するからです。AVCHD の H.264/MPEG-4 AVC に比べれば MPEG-2 は「軽くて速い」コーデックと言えますが、DV ほど単純明快でもない、中間ということになります。
また、映像編集がしやすいとは言ってもコーデックもしくは記録方式が、の話で、テープに書いたものをいったん PC などに取り込まなければノンリニア編集できないのは確かです。
放送局でも使われている高画質
くだんの店員さん、HDV が好きなのかさらに続けます。
店員: 「…劣化が少ないので、放送局の素材撮りにも使われていますよ。ソニーが、HDV 規格のカメラを作り続けているのは、ちゃんと理由があるんです。AVCHD と違って、テープデバイスは、1本の撮影時間が 60分という風に読めるから、使いやすいですし。」
民生用でなく、プロユースに使われているのは確かなようです。ソニーの HVR-Z1J あたりを見せられた気がします。確かに、ソニーの民生用でなく、業務用製品情報のページを見ると、HDV カムコーダーのラインナップが充実しているようです。
安価な MiniDV テープで HD 画質、というインパクトはかなり魅力的に映ります。データのビットレートも 27Mbps と AVCHD 方式の一般的なカメラでの 18Mbps を大きく上回ります。((AVCHD でも、一部のカメラでは 24Mbps を実現している。キャノン iVIS HF11, HG21))
しかし、HDV の HD 画質、というのは、実は 1440x1080 ピクセルだったりします。AVCHD のフル HD モードでは 1920x1080 と水平解像度において違いがあります。ディスプレイが 1440×980 あたりなら別に何も感じませんが、自宅のものは 1900×1200 なので、やはりディスプレイの性能をフルに生かすことができないことになります。
何より、ビデオカメラにするなら動画の画質において突き抜けたモデルよりも、静止画撮影もできるタイプという路線はやはり捨てたくないため、店頭での HDV トークにはかなりグラグラ来ましたが、引き続き AVCHD モデルを検討することにしました。
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