電話…といっても、携帯電話ではなく、自宅や勤務先に設置されている固定電話の話です。

加入者の自宅が停電してしまったら、電話をかけて誰かに助けを求めることはできるのでしょうか。

答えは、何でどういう風に接続されているかによります。

ネットなし、停電対応電話なら停電時も OK

左が自宅。右が NTT など通信事業者側です。

電話 — (銅線) — 局舎

一戸建ての自宅、ネットに接続するつもりがない、ビジネスホンなど構内交換機 (PBX) に接続されていない、など沢山条件がつきますが、要するに端から端まで銅線 (メタル) ケーブル直結の場合、停電時でも通話はできてしまう可能性が高いですね。

電話も、機種によって AC100V が停電しても通話できるタイプとできないタイプがあります。どちらだか分からない場合は、コンセントから抜いて 3分以上放置してみて、やおら受話器を上げて「ツー」というトーンが聞こえれば停電対応です。また昔の黒電話では、AC100V をそもそも必要とさえしていないので、停電してもつながります。

AC100V の電源供給がないのに、電話が動くのはちょっと不思議ですね。実は局舎の方から 48V の直流電圧が印加されていて、これが電源になるわけです。

ADSL を引いている場合

電話 — ADSL ルータ — (銅線) — 局舎

ADSL ルータは AC100V からの電源供給が止まれば、動作できなくなってしまいます。しかし「落ちた」場合も、申し込んだ ADSL が通常のタイプ1 (電話併用タイプ) では、電話からの通話はできることが多いようです。タイプ2 だと、ネット接続専用の IP 電話ということなので、ADSL ルータが動作しなくなれば通話もできません。

ひかり電話など光ファイバはどうなのか?

電話 — 光対応ルータONU — (光ファイバ) — 局舎

銅線での電話回線を休止するなどして止めてしまい、光ファイバを引き、ひかり電話を導入しているような場合です。この場合は、ADSL タイプ2 と同じで、電話による通話も含めてすべてがネットに依存していますので、停電してしまえば通話はできません。ADSL と同様、ルータが AC100V が断たれると動作できないからです。さらに ONU (光回線終端装置) という四角いハコがたいてい、電源アダプタ経由を AC100V に接続する必要があるので、停電すればオシマイです。

もっともそれでは困るので、NTT 東日本では停電対応機器なるものをレンタルしています。これを使うと、約 30分間は電源を供給してくれます。

ところが、もっとスゴい (?) 技術があります。

停電時に光ファイバだけで通話できる技術があった

光ファイバには、メタル (銅線) ケーブルのように 48V がそもそも供給されていないので、それを頼りに電話機を動作させることはできません。

ところが、NTT アクセスサービスシステム研究所 (AS研) と NTT コミュニケーション科学基礎研究所により、停電時にも光ファイバだけで音声通話ができる技術が 10月15-16日に「つくばフォーラム2008」という展示会で公開されました。

ファイバの中を「光」に乗せて音声を伝える、という点は通常のひかり電話も同じことなのですが、局側とユーザー側にあらかじめ、特殊な機材を接続しておくことで、なんと電源要らずでイヤホンから音が聞こえてくる! というものです。

もっとも、音声はまだまだ不明瞭だったり、アップリンク (ユーザー側から局側への通信) は他のお宅の声が混じってしまったり、まだまだ試行錯誤中のようです。

子供のとき、科学の実験で鉱石ラジオ (ゲルマニウムラジオ) を作ったことがある世代なら、それの光ファイバ版ですね 🙂

震災に対応した通信手段は多いほどよい

大震災に遭遇したら携帯電話があるからいいか、という気もしますが :mrgreen: 、携帯電話の基地局は数100m から数 km の範囲に建てられており、ひとたび地震が起きればそれらも一蓮托生で倒壊もしくは故障している可能性があります。

もしかしたら、光ファイバの先だけからかすかに聞こえてくる人の声に救われる、という状況にいつかなるかもしれませんね。