イーモバイルの HSDPA による 3G ネットワーク ((第三世代携帯電話の通信網)) に無線 LAN を経由して出て行くためのルータ機器には、AC アダプタに接続するタイプもあります。3G 無線 LAN ルータと ADSL ビジネスについても書いてみました。

トリプレットゲートのワイヤレスゲート ホームアンテナ for イー・モバイル

プレスリリースによるとこの製品、無線 LAN の IEEE 802.11b/g とイーモバイルの USB タイプの D02HW 間を橋渡しするルータ、という意味では PHS300 と同じですが、内蔵バッテリーを持たず、AC100V で動作する点が違います。

またしても D02HW 専用か、というのが D11LC 使いとしてはいささか残念です 🙂

暗号化方式は WEP/WPA/WPA-PSK となっていて、PHS300 が WPA2 までサポートしているのだとすると、少し劣ります。

価格が 14,980円と、リチウムイオンバッテリーがない分安くなっています。屋外で移動中には使えませんが、オフラインミーティング会議のとき臨時アクセスポイントを設営したり、長時間安定して動くなら、ADSL 代わりに使う用途もありそうです。

ワイヤレスゲートというと本来、Yahoo! 無線 LAN スポットなどと同様な公衆無線 LAN サービスの名称として知られています。ヨドバシカメラの店頭でよく勧めているアレか、といえば見た覚えのある人も多いはずです。その名を冠した 3G 無線ルータが出てくるのは唐突に思えますが 🙂 、見通し 30-100m 程度しか届かない無線 LAN スポットが 6,000箇所あっても、携帯電話の「カバー率」に慣れてしまった現代人には信じられないピンポイントなサービスなので、無線 LAN を補完するものとしてリリースしたのでしょう。

Express Card タイプも使える、Cradlepoint 社の CTR500

前回書いた PHS300 をリリースしている米国アイダホ州の Cradlepoint 社も、CTR500 という AC アダプタタイプのラインナップを用意しています。IEEE 802.11b/g サポート、USB タイプだけでなく Express Card タイプのデータ通信カードもサポートしているのが大きな違いでしょう。

モバイル市場に上下から食い荒らされる ADSL ビジネス

まず、3G 無線 LAN ルータ 4製品についてまとめてみました。

製品名 ソフト / ハード メーカー 電源 無線 LAN 暗号化方式 価格
WMWifiRouter ソフト Morose Media
(Windows Mobile 機のスペック依存)
3,150円 (税込) + スマートフォンの価格
PHS300 ハード Cradlepoint / コミューチュア リチウムイオンバッテリー IEEE 802.11b/g WEP/WPA/WPA2 19,800円
US$179.99
ワイヤレスゲート
ホームアンテナ
ハード トリプレットゲート AC アダプタ IEEE 802.11b/g WEP/WPA/WPA-PSK 14,980円
CTR500 ハード Cradlepoint AC アダプタ IEEE 802.11b/g WEP/WPA/WPA2 US$179.99

こうした、HSDPA 汎用の無線 LAN ルータ、Windows Mobile 汎用の無線 LAN ルーティングソフトウェアといったものは、携帯電話やデータ通信端末を「外付けモデム」として利用したときのデータ通信料に上限がなかったため、値段の点で実用的ではありませんでした。

しかしイーモバイルが、スーパーライトプランで上限 4,980円 (税込) という圧倒的な価格で、しかも都市部では遜色なく使えることから、一本のイーモバイル回線契約で、外では定額モバイル、屋内でも ADSL 代わりに使うカジュアルユーザーが増えていくのではないでしょうか。

有線 / 無線の区別なく、提供予定のものも含めてネットへの物理的な接続方法と通信速度を比較してみました。

接続方法 通信速度 (下り) サービス開始時期
光ファイバ 公称 1Gbps~100Mbps 既存
LTE 実測 250Mbps~100Mbps 2010年
ADSL 公称 50Mbps~1Mbps 既存
モバイル WiMAX 公称 37.4Mbps 2009年
3G HSDPA 公称 7Mbps~3.5Mbps 既存

ADSL の上限は 50Mbps で、公称スペックだけ見れば HSDPA は 10分の1 前後しか出ていないように思えます。しかし、動画や重い PDF のない Web サイトなら、3.5Mbps 程度でも過大なストレスなくブラウズできてしまうのが現実です。

そもそも ADSL はメタル (銅線) による加入電話が前提で、NTT 東西の固定電話のシェアが 2008年6月現在で 86.3% と減少し続けています。なのに、価格.com のプロバイダ比較でみると分かりますが、一定期間利用すると 39,484円割り引いて、その結果最初の 1年間の実質費用が 82円/月という Nexyz.BB 8M プランの例を筆頭に、新規加入者にキャッシュバックがあるのがデフォルトになっていて、事業者から見るとうまみのないビジネスになりつつあります。

今後提供予定の LTE や WiMAX も結果として ADSL の通信速度レンジを上下から奪う形になっており、ADSL の長期低落傾向に拍車をかけると思われます。