幕張メッセで 10月に行われた CEATEC JAPAN 2008 で、超薄型テレビや超解像の展示が幅をきかせるなか、商売柄、面白かったのがジェスチャーで操作するテレビでした。

Panasonic の空間ハンドジェスチャーUI

けっこう人だかりのできていたこの展示。ディスプレイの前で、係員が片手を動かすと、アルバムの写真が一枚出てきます。

両手で大きなハンドルを回すような動作をすると、写真が回転。

両手を広げたり縮めたりすると、拡大縮小します。

距離画像センサーは、そこそこの性能だがそこそこの反応速度

よく見ると、ディスプレイの中央上部に紫色の LED が光っていることが分かります。

これがミソで、LED光を用いた光波測距により、形状と奥行きをリアルタイムに出力できる距離画像センサーだそうです。画素数は X: 160, Y: 120 = 19200ピクセル、応答速度は毎秒 12フレーム。デジカメの解像度で感覚がマヒするとずいぶん低そうに見えますが、要はジェスチャーが判別できればよく、プライバシーに関わるような人の顔まで分からなくて良い解像度ということなのでしょう。

実際のデモンストレーションを見ていると、それほどコマンドの数も多くないため、誤動作はしていないものの、ちょっとジェスチャーに対して丸いカーソルの反応が 0.5秒~1秒ぐらい遅れていました。

光源に LED を採用しているため、安全性が高いとも書いていますが、見ているとこの紫色の LED、肉眼でもちらつきが気になります。テレビを見る距離からだと、見かけの大きさはさほど大きくありませんが、私は蛍光灯のちらつきに敏感な人種なので、けっこう気になりました。

日立のジェスチャー操作テレビ

超解像テレビブースから出てきたところで、それほど目立たない位置に参考出品されていた日立のジェスチャー操作テレビです。上部ではなく下部に LED とセンサーが見えます。色は紫で、やはり若干ちらついて見えます。どちらも紫なのは、可視光線のなかでもっとも波長が短い色だからでしょうか。

Panasonic のものは 2つの LED であるところに、距離測定の精度を上げる秘密があるのかなと思って見ていましたが、1つでも十分な精度を発揮していました。説明員の見せ方がうまい部分もありますが、来客のテストプレイを見ていてもやはり、日立の方が反応が速かったです。

ジェスチャーの組み立ても Panasonic よりも感覚的で、手を振るとテレビがスイッチON、両手でハンドルを回す操作をすると音量調節、両手を狭めた後、「掌底突き!」とばかりに手の平を突き出す動作をするとパッとテレビが消えます。

次世代を予感させるが、テレビのリモコンを置き換えるには道のりは遠い

日立のものは今すぐにでも使いたいと思わせる気持ちよさでしたが 🙂 、残念ながら参考出品だそうです。説明員でさえ、「テレビのリモコンと併用ですかね」と一言いっていたのが印象的で、実用化には今ひとつ詰めが甘いというところなのでしょう。

Panasonic 製品に書かれていた光波測距というのは、会場のプレートによると、LED から照射した光を人体が反射してセンサーに届くまでの到達時間を、画素ごとに計測するようです。1秒間 12-15コマの動画やゲームを考えると、なめらかとは言いませんが、物体がどちらに動いているかはもちろん、動画としても一応見られるレベルです。セン サーの物理的な問題ではなく、右から左にいま動いた「物体」がペットのネコなのか、走っていった子供なのか、それとも本当に手だけのジェスチャーなのかを 判別するのに時間がかかっているのでしょうかね。

価格とのトレードオフで、消費者が買おうと思う価格で出てくるにはまだ 1年はかかりそうな気がします。