番組の流れ

3/21 放送の NHK 放送記念日特集「新動画時代 メディアが変わる」を見ました。

今まで動画コンテンツが放送局を通して放送されていたものが、20代など年齢層が低めの視聴者ほど、テレビよりも Youtube などネット上の動画を好んで視聴する方向にある。スポンサーからの収入も、Youtube 経由でコンテンツクリエイターが受け取れるようになっている。

テレビ局を経由しないビジネスモデルがネット上で構築される中、BBC など各国のテレビ局も、視聴者層のチャネルに合わせたコンテンツ作りをどのようにネットに流して、発言力を維持するか。

とだいたいそんな内容でした。

出演者のスタンスの違い

前半ざっと流し見していた印象としては、新しいネット動画メディアの台頭を見て予想外の黒船が来たと当惑し、議論しつつ右往左往して、どうにか時代に追いつこうと現状の分析につとめるテレビ局側と評論家の皆さん、という図式なのかなと思っていましたが (失礼)、現状のまとめとしてニュートラルな意見が出ていました。

全体に慶応大学教授の村井純氏の「電子透かし」技術などを利用して放送局側、著作権者側のコンテンツを保護したらどうかといったテクニカルサイドからのアプローチ。

秋元康氏は著作権者からの視点で、放送局に期待する役割 (動画の中から recommended を紹介していくソムリエになるべきである) について考えるアプローチの違いが出ていて、面白かったと思います。

Taipei Game Show 2008 での富野由悠季氏の講演でも、同氏が自分はロボットものアニメは実は嫌いだが、自分のクリエイティビティを発揮するツールとしてロボットものを使ったんだという話がありましたが、クリエイターの視点っておそらく類似しているんだなと思いました。ネット動画がこれから伸びると思えばそれを使えばよし、次の時代が来ればそれに乗るまでだと。

取材は幅広くやるべき

後半、各テレビ局のネット動画時代への取り組みが紹介されていました。
それ自体は興味深かったのですが、「そこで NHK も動画アーカイブを提供します」「しかし放送法の改正なくしてそれはできなかったのです」といった、ここぞとばかりに NHK 自身の苦境を、ゲストのアサインや彼らの立場をうまく使って、ゲストの口を通して、もしくは他のテレビ局がやっているのだから NHK も、言わせたい企画側の意図が強く出ていて、ある種のいやらしさを感じました。

Youtube と Google アドワーズ動画広告から始まって、延々と 1時間30分つづく番組の中で、国内のニコニコ動画もニコニコ市場も取り上げられないのは、「新動画時代」を銘打つならあまりにもバランスに欠いていると言わざるを得ません。Youtube にも違法コンテンツは載りますし、ニコニコ市場も著作権侵害に配慮しているといった類の発言や取り組みも進めてきているのに、です。

ネットカルチャーは、昔は「草の根BBS」なんて言われたボトムアップな広がりがネット上で規模を拡大して繰り返しているようなもので、放送局がコントロールできない世界です。

価値のあるコンテンツ、ないコンテンツ、真実と模造品が入り乱れる messy さ、著作権上ぎりぎりの動画もよく流れる、プロバイダ側も努力しているけど 100% はないという意味ではニコニコ動画も Youtube も同じだと思います。

放送には適さないコンテンツといいつつ、イラクで撮影された米軍の発砲シーンも紹介されていましたが、敏感な視聴者に子供が寝る前の茶の間に流すなといったフィードバックを受けそうな、踏み込んだ例を紹介するなら、国内のコンテンツは?

どうも海外ならなんでも迎合してしまうタイプの人が制作したか、Youtube にお近づきになっておきたいのか、はたまた国内著作権法がからむ部分は、NHK 自身が今後やりたいネット動画のプランがあってどう飛び火するか分からないから、近所の火事は取材しないでおくのが無難といった、

「ちょっと首のスジを寝違えた朝」

のような母集団に無理がある取材。それをパネラーと司会者が現状のニュートラルな姿をなんとかフォローしようとする感じのする番組でした。